〆切に追われて

とにかく作文が苦手だった。あの400字詰原稿用紙1枚を埋めることだって、苦痛で。昔、夏休みの宿題の一つに日記が出され、日々原稿用紙を埋めなければならない、悪夢のような夏の終わりを経験したけれど。その頃にくらべれば、最近はずいぶんとマシになり、風呂上がりのひとときを書くことに費やすことができる程度には、成長したようだ。

しかし振り返ってみると、あの夏の終わりのような状況は、その後も繰り返し繰り返し私の前に立ち現れてくる。原稿の進捗状況を問われて「今送ります」と答えた〆切の日の夕暮れ、徹夜して書き続け泥のように眠ったあの日の草稿。余裕をもって書き上げている場合もあるけれど、その場合はたいてい、平行して他の〆切に追われているときで。

〆切は人を悩ませる。けれどもそれは、人をさらに一歩成長させてくれるものでもあるようだ。